西加奈子「うつくしい人」を読んだ

何かに疲れていて、でも、生きていかなきゃいけなくて。何かに出会うことによって(それは人間でも自然でもモノでもなんでも良いのだが)癒されていく、そんな話が好きだ。

 

あらすじ

他人の目を気にして、びくびくと生きている百合は、単純なミスがきっかけで会社をやめてしまう。発作的に旅立った離島のホテルで出会ったのはノーデリカシーなバーテン坂崎とドイツ人マティアス。人にどう思われようが、関係なくただそこにいるふたり。ふたりに出会ったことによって、すこしずつ、百合は再生していく。

きっかけは些細なこと

何かが壊れる原因は、いつも些細なことだと思う。靴紐がほどけたとか、満員電車で足を踏まれたとか。ある瞬間に、「もう、だめだ」「疲れた」と、気付く。たぶんそれは急なものではなくて、すこしずつ、日々の生活の中で積み重なっていたものだ。小さな違和感だとか、「なんか違うな」と思うことを、感じれるようにしていたい、と思う。

なにかに触れる

百合はホテルのカーテンを開けて、「あ!」と声を出した。そこで、唐突に理解する。海はいつも同じではない。一昨日も昨日も今日も、違う海だ。

海が信じられないくらい青く光っていた。(中略)海も変わるのだ。こんな立派な海が。では、私が変わることくらい、環境によって自分を見失ってしまうことくらい、起こりうることなのではないか。(p.191)

 

百合と坂崎とマティアスは、ある夜、ホテルの図書室で写真を探すことになる。本を読むのではなく、ぼーっとしに来る人が多いのなら必要ないのではと言った百合に、坂崎の言った言葉が、とても好きだった。

「うーん。でも、本を置きに来るんです。吸収するだけじゃなくて、置いていくことも必要なのかもしれない、と思います。」坂崎は、しみじみとそう言った。何故かその言葉は、私の頭に素直に入って来た。吸収すること、身につけることだけが、人間にとって尊い行為なのではない。何かをかなぐり捨て、忘れていくことも、大切なのだ。(p.207)

 

疲れたときに読むと、ふっと楽になる。私はこの物語を今後もきっと、何度も読むことになるだろうと思う。

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